【LINKな人】vol.3井島愛華さん(旅人、ダンサー、ヒーラー)

【LINKな人】

今回のLINKな人は、ダンサーやヒーラーとして各地を回っている旅人の井島愛華さんです。国内外を旅しながら井島さんが得た「命の希望」。一人でも多くの人に自身の体験を伝えたいと、現在は本の出版に向け執筆活動を行っています。現在札幌に滞在中の井島さんに話を伺いました。

居場所を探し続け、食べて吐く摂食障害を抱えるように…

井島さんは、1987年群馬県の玉村町出身。幼い頃は外で遊ぶのが大好きな活発な少女でした。そんな井島さんが、家にいても「何か」違和感を覚えるようになったのは物心がついたころ。母親の体調がすぐれず、父親はその心配からか、母親に対していつも辛そうに接していました。「家は本来、安心できるはずの場所なのに、どこか落ち着かず、いつも心がさまよっているような感じでした」。

中学に進学し、学級委員になるなど積極的にクラスの中心にいるものの、学年の後半になると不登校気味に。「どこかで無理をして、自分の居場所を探していた感じでした。周りに無理矢理話を合わせたり、大人ぶったりしているうちに、後半疲れてしまって…」と話します。中学3年生になると、過食と嘔吐を繰り返すようになります。おなかいっぱい食べ、トイレに行って吐く。「吐いた瞬間、スッキリして自分が一気に解放されたような気分に。それが気持ち良くて、その瞬間のために食べて吐いてを繰り返していました」。さらに、もともと筋肉質でがっちりした体格だった井島さんは、自身の体型にもコンプレックスを抱えていました。吐けば吐くほど、おもしろいくらい体重が減っていき、「痩せたね」と言われることが嬉しくて、さらにエスカレート。「39キロまで体重が落ち、さすがに周囲からは痩せすぎじゃない?と心配されるように。食べて、吐くという行為が、気が付くと自分が自分でいられる瞬間になっていました。自分自身に戻れる瞬間というか…」。常に周りを気にして、自分の言いたいことを言えず、ストレスを抱えた状態だったという井島さん。当時はストレスの処理の方法が、食べて・吐くということしか分からなかったと言います。

現在、札幌に滞在中の井島愛華さん

子どもの頃から英語が好きで、13歳ではじめてアメリカへ。シアトルでホームステイを経験します。高校2年のとき、再びアメリカへ。モンタナ州の高校へ留学しますが、ステイ先でも過食をやめられずにいました。帰国後、うつ気味になり、再び不登校に。リストカットもするようになりました。「すごく痛いんです。でも、痛みから自分という存在を感じられました。自分が何をしたいのか、何を言いたいのかも分からなくて、親にも理解されず、ただただ居場所が欲しかったのだと思います」。

とにかく家を出たくて、高校卒業後、東京へ。昼はホテルで働き、夜は旅行系の専門学校に通いました。しかし、学校で過呼吸の発作を起こし、はじめて病院を紹介されます。「必死にもがいていて、でも自分ではどうしようもできなくて、休みたくて入院もしました。20歳くらいだったかな」。しかし過食と嘔吐はやめられず、食費を稼ぐために風俗の仕事を始めます。「あの頃の自分にとって、風俗は生きる術であり、とにかく必死でした。でも、必要とされることでやっと居場所が見つかったような気もしていました」。

震災ボランティアを経て、心が動くまま世界へ

22歳のとき、年上のパートナーと一緒に暮らすようになり、好きだった英語の通訳の勉強をはじめます。信頼できる相手との暮らしは精神的安心と経済的安心を与えてくれましたが、摂食障害はなかなか克服できずにいました。そんなとき、東日本大震災がおきます。「突き動かされるように行かなきゃと思いました。ボランティアとして岩手県宮古市へ。住み込みボランティアとして2年半ほど関わりました」。最初はがれき撤去がメインだったボランティアも、そのあとはグリーフケアにシフトしていきました。被災者の方たちに自分は何ができるかを考えるうちに、マッサージで体をほぐし、リラックスさせてあげたいと思いはじめ、マッサージの勉強をはじめます。

震災ボランティアに携わっていた頃

同じ頃、オラクルカードに出合います。オラクルカードのオラクルとは「神の言葉」「お告げ」「神託」を意味するもので、このカードを引くようになってから、「目に見えないものの話になりますが、明るいエネルギーが自分と繋がるようになって、気が付くと過食と嘔吐の回数が減りはじめました」。それまでは、いつも暗くて重いエネルギーの中にいたような感じだったと振り返ります。

2013年、以前から関心のあったエイズ問題に取り組みたいとウガンダへ。エイズ孤児の通う学校建設に参加しますが、マラリアにかかってしまい帰国。ここから、お金もツテもない旅生活が始まります。「仲間にタイマッサージをしてもらって、強い衝撃を受けました。これを本場で学びたいと思いました」。思い立ったらすぐに行動。お金はありませんでしたが、タイのチェンマイへ飛びます。半年ほど滞在し、タイ古式マッサージを習得。そのあと、宿泊先にいた旅人仲間から「オーストラリアへ行くといいよ」と言われ、ワーキングホリデーのビザを取得し、オーストラリアへ。このときの所持金はたった5000円。それでもなんとかなる!と突き進むのが井島さん。紆余曲折はあったものの、タイマッサージの仕事をしながら2年近く滞在しました。帰国するかと思いきや、次はインドへ行くことに。「オラクルカードをはじめてから、レイキなどエネルギーのことに興味が出て、インドで半年近くエネルギーワークを学びました」。そのあとは、カンボジアへ行きますが、なんとデング熱にかかり、あえなく帰国。気がつけば、約4年ぶりの日本でした。

エイズ問題に取り組みたいと行ったウガンダで
オーストラリアでは初めてのヒッチハイクにも挑戦

ラテンダンスに魅了され、スペイン、ブラジルへ飛ぶ

いつの間にか旅をしながら生きていくことが、井島さんにとっては当たり前になっていました。帰国後は伊豆半島に滞在。サルサダンスに出合い、京都へマッサージの勉強へ通う日々を送ったあと、次は北海道へ。ニセコでマッサージの仕事をする傍ら、ラテンダンスに明け暮れました。サルサのほか、札幌ではサンバにも挑戦。次第にまた海外へ行きたいという想いが沸き上がってきます。「ちょうどスペインへワーキングホリデーで行けると聞き、スペインでラテンダンスを踊りたい、学びたいと思いました」。今回は所持金4万円で、スペインのバルセロナへ飛び込みます。サルサのレッスンを受けるうちに、サンバも踊りたくなり、サンバのレッスンも受けます。とにかく心の声に従って行動。すると、今度はブラジルへ行ってサンバを踊ってみたいという衝動にかられます。なんとか飛行機代を手にし、ブラジルのリオへ。とはいえ、ポルトガル語は分からないし、お金もほとんどない。思い切って、ブラジルから「愛華生き方応援ファンド」を立ち上げます。自分のことを純粋に応援してくれる人たちのおかげで、なんとかブラジルでの暮らしを整え、次はリオからサンパウロへ。サンバチームに入り、踊ることに熱中します。

札幌でサンバのイベントに参加
スペインのバルセロナでダンス仲間たちと

半年ほど経った時、原因不明の体調不良に襲われ、ブラジルから帰国。「エネルギーが切れたような感じでした」。その直後、世界中でコロナウイルスの感染が一気に拡大します。「ちょうどいいタイミングだったのかもしれません。あのままブラジルにいたら帰国できなかったかもしれないですし…」。日本に戻ってからは、熊本をはじめ九州でダンスレッスンやヒーリング講座、カウンセリングなどをしながら暮らします。

日本に戻ってからはバイクで九州などを回りました

新しい夢は、これまでの経験をまとめた本の出版

気が付くと、長年苦しんできた摂食障害が治っていました。体当たりの旅の中で、自分自身と向き合い、心から自分がやりたいことを追い求めているうちに、自分を否定することをやめ、自分をまるごと受け入れられるようになった井島さん。子どもの頃からずっと探し求めていた居場所も、自分自身の中に見つけることができたようです。今は札幌に滞在しながら、これまでの旅での経験を「本にしたい」と考えています。ここでは書ききれないほど、旅先ではたくさんの驚く出来事があったそう。「本を出すことで、私と同じような悩みを抱えている人に大丈夫だよと伝えたいし、読んだ人が何かを感じ、行動を起こす一歩になってくれたらうれしい」。井島さんからは必ず本を出すという強い意志が感じられました。本を出す日もそう遠くはないかもしれません。

井島さんは本を出版するためのクラファンを行っています。興味のある方、クラファンに参加したいという方はこちらから。https://note.com/dynamicjourney/n/n7f2cbbec34c3



書いた人/徳積ナマコ
生活情報紙の編集、広告制作の会社勤めを経て、フリーランスに。ライフスタイル、クラフト、食、アート、映画、ドラマ、アウトドア、農業、健康、スピ…と、興味があるとなんでも首を突っ込む。人の人生ややりたいことの話を聞き、まとめるのも好物で、最近はプロフィールライターとしても活動。https://tokutsumi.com/




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