ブロックチェーンを使った未来のカタチVol.3~アナログ人間にも分かるように教えてもらいました  

ブロックチェーン

前回は、 川本栄介さん(ブロックチェーンのテックカンパニー「アトノイ」代表)に 、ブロックチェーンの技術的なことや仕組みのポイントについてレクチャーしてもらいました。今回は、具体例をあげながら、ブロックチェーンを用いた仕組み作りと、それによって私たちの行動がどう変わっていくかについて教えてもらいました。

編集部 / 前回、スマートコントラクトの恩恵という話で終わったのですが、前回伺ったブロックチェーンの特性を活かすことで、さらにどんなことが可能になっていくと川本さんは考えていますか? よく川本さんが言っている「情報が個人に帰属」「見える化」「情報の真正性」といったキーワードも関係してくるのかなと思うのですが。

川本 / そうですね。今日は、そこからどんなことがさらに可能になるか、ブロックチェーンの技術を取り入れることで、どんな仕組みが作れるかを、例えを出しながら話していきましょう。スマートコントラクトの恩恵にも繋がる話になります。

1回目にトークンエコノミーという新しい経済の仕組みについて触れたと思いますが、覚えていますか?

編集部 / はい、同じ価値観や目的を持った人たちの特定のコミュニティーの中で経済が回っていくという話でしたよね?

川本 / そうです。では、少し例えを使って説明しましょうか。何かしらのHOW TOものの投稿サイトがあったとします。いろいろな方のレシピが載っているレシピサイトや家事のお役立ち情報が載っているサイトなど。

その家事情報サイトに、収納や片付けが得意なAさんが収納に役立つ情報を1つ投稿します。でも、現状のこういったサイトにおいては、基本的に投稿したら終わりで、それだけではAさんに特に大きな見返りはありません。イイねがいっぱいもらえる程度でしょうか。投稿回数を重ね、Aさんの収納HOW TOが話題となり、本を出すことになったり、コラボ商品化などに繋がらない限り、直接的な報酬は得られません。そしてそのようなケースはごく稀です。

しかし、この家事情報サイトがブロックチェーンを導入し、トークン(仮想通貨)を発行するとしましょう。そのシステムは次のような感じです。Aさんが、収納のHOW TOを1つ投稿すると、サイトから3トークンもらえます。そのAさんのレシピを見て、「これはイイ!」と思ったBさんが、投げ銭的に1トークンをAさんに送ることができ、Aさんはそれも受け取ることができます。そしてBさんがシェアしたり、実践した感想を書き込みます。するとサイトからBさんに1トークン、Aさんからもお礼の気持ちの1トークンがBさんに送られます。こうしたトークンのやり取りなどの記録はすべてブロックチェーンに記録され、「見える化」されていきます。

編集部 / そのトークンはサイト内で使えるお金ってことですよね。サイト内でグルグル回っている感じですが、これってポイント制とは違うのですか?

川本 / ポイントだと、一方的に貯まっていくけれど、送ることはできず、双方向ではありません。経済としては回っていかない。これを回していく、循環させていくのがトークンエコノミーです。

編集部 / よく昔、新聞に投稿したら謝礼で500円のテレフォンカードもらったり、1000円の図書券もらったりしましたけど、それも一方的ですよね。

川本 / そうですね。

それからもう1つ。現状だと、誰かがHOW TOを投稿するたびにサイトから謝礼や謝金を出すというのは経費がすごくかかります。1つのHOW TOに対して300円とか500円とか出すとしたら、それを振り込んだり、送ったりするのも大変だし、時間がかかる上に、手数料のほうが高く付く場合もあります。でも、ブロックチェーンの技術を使うと…。

編集部 / あ、マイクロペイメント、少額決済が可能だし、即時的にトークンが送れる! そして、これって自動的にトークンを送るシステムが実装されていたら、スマートコントラクトってことですよね?

川本 / はい、そういうことです。

そして、そのサイト内での行動履歴はすべてブロックチェーンに残ります。だから、AさんのHOW TOに投げ銭をしたBさんが、実はいつもAさんにイイネをしたり、投げ銭してくれていたら、そのことがAさんにも分かるのです。Aさんからすると、Bさんがいつも自分を応援してくれるファンの方だと認識できるし、どういうふうに応援してくれているかも分かる。そうしたら、AさんがBさんに「いつも応援してくれているから、今回は発表前のHOW TOを特別にBさんに見せます! 率直な感想をください!」といったやり取りも可能になるわけです。

編集部 / そういうやり取りはいいですね。そして、応援しているBさんにも応援に対しての対価が払われるというか、トークンが付与されるのも面白いですよね。

川本 / はい。この場合だと応援するという行為がきちんと記録され、そこが認められるということです。SNSだと、ここに偽りが生まれることもあります。大して行動していないけれど、そう見せかけることは可能です。「イイね」はただ押すだけだから、ただなので。だから、SNSは目立つ人やとりあえずイイ顔をしておきたい人にとっては、便利で都合のいいツールかもしれないですけど、目立たない人だって心の底から応援している人はいるわけです。本当にイイと思って、応援したいって思ったら、人ってそこに何かしらのアクションをしたくなるはず。それを、トークンを送るという行為で表すわけです。そして、その応援したという頑張りがブロックチェーンに記されたデータによって、定量化されるのです。それは改ざんができないから、真正性に値するわけですよ。

編集部 / 川本さんがよく言っている正しい情報が個人に帰属しているということですね?

川本 / そういうことです。ブロックの中に何を書き込むかは、トークンの発行体によって設定内容は違ってくると思いますが、それでも、そのトークンをどうやって手に入れたか、どう応援し、どう行動したからそのトークンが手に入ったかというのは分かります。だから、派手で目立つとか地味で目立たないとか、そういうことは一切関係なく、個人の頑張りと行動だけが記録されていくのです。応援された側も、これまでどんな応援をしてきている人(誰にトークンを送っているか)が自分を応援してくれたかが見えるので、本当に応援してくれている人かどうか分かりますし、モチベーションも上がると思います。しかも、トークンの履歴は第三者も見ることができるので、ある意味フェアだと思うのです。

そして、それによって人と人が誤解なく分かり合え、繋がっていけると僕は考えています。これは「イイね」だけの繋がりではないので、SNSよりワンランクアップをしたような感覚ですね。真正性のある情報によって判断するから、HOW TOサイトに参加しているすべてのステークホルダーが、公平に正当な報酬を受けること(トークンをもらうこと)ができ、認められるというわけです。

編集部 / で、そのトークンはHOW TOサイトで使うことができるんですよね?

川本 / はい、できます。たとえば、HOW TOサイト内で物販があった場合、そのトークンで買い物ができたり、オンラインイベントがあったらそのトークンで参加できたり。家事系なら、HOW TO に関係ある100均とかの商品がトークンで購入できたら面白いかもしれませんね。あるいは、Aさんの収納HOW TOの書籍化が決まったら、そのトークンで購入もできる。もしくは、別のCさんのお掃除HOW TOに投げ銭することも可能です。こういった行動もすべて記録されていきます。

編集部 / ちょっと恥ずかしい気もします…。

川本 / ここも考えようだと思うのですが、今は見栄やウソがはびこっているじゃないですか(笑)。だから、本当に欲しいわけじゃないものも、とりあえずなんとなく買ってしまったりする。でも、これらも記録され、改ざんできないと思ったら、本当に欲しいものしか買わなくないですか? ある意味、正直にラクに生きていける気がするんですよね。そうすると、とてもシンプルな生き方になっていきませんか? 好きなものに没頭できる、好きなものを純粋に応援できる、そんな感じになっていくと思うのですが…。

ブロックチェーンは性善説に基づいているツールだと僕は考えています。もちろん、ブロックチェーンが導入されてもウソをつく人はいるだろうけど、残った記録は消せないから、ウソの活動をする人は減るのではないかと。ブロックチェーンが抑止力になる部分も出てくる気がします。つまり、それって自分のやることに対して責任を持つようになるということ。今は何気なく押している「イイね」のボタンの重みも変わってくると思います。発信する側も受け取る側も互いに捉え方が変わってくるのではないかなと。互いの熱量や本気度が変わってくる気がしています。トークンをどうやって得たかも履歴で分かるので、どういう人から評価されてトークンをもらったかが重視され、トークンの量よりも誰からもらったかという価値に重さを感じる時代になっていくと思います。

そして、個人に帰属されたその記録がずっと残っていくことで、過去の信用が未来の信頼へつながるとも僕は考えています。

編集部 / こういうことをやってきたという記録がその人のことを証明しているから、この人は大丈夫とか、この人なら任せられそうということに繋がるというわけですね。

川本 / そういうことです。あらかじめ決められた条件下で純粋に頑張っている人ほど正当に評価されるようになると考えています。今回はHOW TOサイトのトークンエコノミーを例に挙げましたが、これ以外でも何かに特化したコミュニティーでブロックチェーンが導入されると、それぞれがフェアな状態で得意なことや好きなことで輝けると思うのです。本質により近づくというか。そして、これが経済だけでなく、社会の仕組みそのものを変えていくのではないかなと考えています。

つづく

◆川本さんが代表を務める株式会社アトノイ https://atonoy.co

編集・テキスト/徳積ナマコ
生活情報紙の編集、広告制作の会社勤めを経て、フリーランスに。ライフスタイル、クラフト、食、アート、映画、ドラマ、アウトドア、農業、健康、スピ…と、興味があるとなんでも首を突っ込む。人の人生ややりたいことの話を聞き、まとめるのも好物で、最近はプロフィールライターとしても活動。

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