ブロックチェーンを使った未来のカタチ~アナログ人間にも分かるように教えてもらいました  Vol.1

ブロックチェーン

個の時代に入ったといわれています。自分の本質に沿った生き方を選ぶ人や、持っているスキル、能力を活かした働き方を実践、または模索している人が増えています。従来の組織の在り方に疑問を持つ人たちも増え、各所ではSDGsの取り組みも行われはじめています。コロナを機に、世の中の仕組みや社会の在り方そのものが変わっていくという見方も多く、すでに転換期に足を踏み入れているという考えの人もたくさんいます。さて、個の時代における新しい社会の仕組みはどんなものが考えられるでしょうか。インターネットが急速に普及し、進歩する中、仕組み作りのツールとして「ブロックチェーン」が注目されています。ブロックチェーンを用いることで、経済の形も新しくなるといわれています。そのブロックチェーンのシステムや新しい仕組み作りに関して、ブロックチェーンのテックカンパニー「アトノイ」の代表・川本栄介さんに教えてもらいました。誰にでも分かりやすいよう、超アナログ編集部員による初心者質問で構成します。

編集部 / そもそもブロックチェーンがよく分からないのですが…。マネーゲーム的な投機目的の仮想通貨で使われているシステムのイメージしかないです。仮想通貨も値動きが乱高下している話はよく耳にしますが、なんとなく難しいという印象だけです。

川本 / 僕たちが普段使っているお金というのは、国が保証している通貨です。それぞれ国の信用のもとに流通しています。そして、そのお金は日常生活で使えるものです。モノを買ったり、サービスを受けたりできなければ、その通貨には価値がありません。その通貨で何ができるかが重要。ビットコインにいくら高値がつこうが、利用用途がなければ、その通貨自体には価値の実態がないのです。最近は仮想通貨での支払いを可能にするという動きもありますが、まだまだ不確定なところが多いのも事実。値動きが安定しないのは、投機目的の人たちの期待や不安によるものの表れなのです。

仮想通貨は、基本的に管理する人がいない通貨です。まれに例外はありますが。管理者がいない状態で仮想通貨の世界が成り立っているのは、ブロックチェーンの技術によるものなのです。

編集部 / 通貨についてそんなに考えたことがありませんでした。でも確かに国の保証と信頼のもとにお金って成り立っていますよね。でも、国が崩壊したら、その国の通貨の価値も信頼もなくなるってことですよね。当たり前のことなのに、ちゃんと理解していなかったかも。管理者がいない状態で成り立つブロックチェーンの世界について教えてください。

川本 / ブロックチェーンは、書き込まれた取引情報を改ざんするのが難しいとされています。改ざんができないということは、不正が行えないし、誰にもコントロールできないということ。例えばですけど、この20年でインターネットがインフラになりましたよね。人と人が結びつきやすくもなっていますし、あらゆる情報も手に入れられます。ネットメディアというのは、1対nで情報を拡散でき、一気に広げることが可能です。でもその情報が正しいかどうかは、集団認知で決まってしまっているのが今の社会。SNSでみんながイイねをしているから、それが正しい、それは信頼できると思っている人が圧倒的ですよね。けれど、今はフォロワーやイイねもお金を出せば買えてしまいます。第三者のコントロールが可能なのです。

編集部 / ハッ。確かにそうですね。イイねの数が多いとそれを信じてしまっているかも。

川本 / 世の中のトレンドとか、GAFAのようなプラットフォーマーが、売りたいものを売る時代になってきているのです。本当に欲しいかどうかは分からないけれど、本当に必要なサービスか分からないけれど、なんとなくみんなが「いい」っていうから、買ったり、利用したりしている。みんなのイイねや評価コメントでモノやサービスの価値が決まってしまっているところがあります。特別損もしていなければ、得もしていないし、「まぁ、いいか」的な雰囲気ですよね。さっきも言いましたけど、これって第三者のコントロールでいかようにでもなるのですよ。プラットフォーマーに情報をつかまれているということなのです。

編集部 / 怖い(苦笑)。

川本 / 本当に自分が欲しいものを探したり、調べたりするには労力が必要です。でも、今は購買記録などをプラットフォーマーが握っているから、レコメンドや広告で、ネット上に興味関心のありそうなものがポッと出てきて、なんとなくポチっと購入ボタンを押してしまう…。商売をするほうとしては、それでモノが売れるからそれでいいのだろうし、消費者側も中にはうまく使われているなと思いつつ、まぁいいかと思っている人が多い。でもね、それって、本当にイイモノを作っていたとしても、その価値を買う人が分かっていないケースが多いともいえるのです。その価値を分かっていて、そのモノがどうしても欲しいと探している人なら、どんなに値段が高かろうが、どんなに労力がかかろうが手にしようとすると思うはず。僕はそれが本来の消費行動なんじゃないかと思うのです。

編集部 / 「まぁ、いいか」となんとなく購入してしまうって、結局いらなかったものも買ったりしているわけだから、逆に世の中に廃棄物を増やす原因にもつながっているのかなって、今思いました。そして、なんとなく情報が握られていることを感じながらも、「まぁ、いいか」となっている自分もいます。で、ブロックチェーンの記録を改ざんできない技術が、どう関係してくるのですか?

川本 / では、まず、ブロックチェーンの技術と特徴から説明しましょう。Pear to Pear(P2P)という分散型データ管理の仕組みをベースに、ブロックチェーンは成り立っています。

編集部 / 分散型? 

川本 / あらゆるサービスの多くは、中央集権型のシステムになっていて、管理者が改ざんしようと思えばできるというわけです。しかし、ブロックチェーンは、情報が分散されていて、取引履歴を世界中の誰もが閲覧できます。世界中の人が監視している感じというのかな。特定の管理者がいないというのはこういうことなのです。そして、この取引履歴は連鎖したブロックに格納されます。もし、過去の取引履歴の改ざんをしたら、それ以降の連鎖しているブロックをすべて修正しなければならない。修正している間にも新しいブロックが次々と生まれ続けるので割りに合わないと感じます。

編集部 / すべて修正、それはそれで面倒ですね。

川本 / そういったことからも不正を働くこと自体が不経済ですし、取引履歴を改ざんできないということから、ブロックチェーン上の取引には信頼が生まれます。

少し僕の話になりますが、僕はインターネット黎明期からこの業界に携わってきて、あらゆるサービスを開発してきました。それらは、管理者が操作しようと思えばできてしまうシステムでした。以前の会社で、仮想通貨のマイニングに携わることがあり、ブロックチェーンの技術に触れ、情報を改ざんできないこの技術を使えば、世の中の仕組みをもっとスマートに変えられるのではないかと考えるようになりました。誰が何のためにどんな行動をしたか。それがすべてブロックチェーンに書き込まれることで、そこには正しい情報が残り、それが信頼に繋がっていく。人と人との関係性やモノの売買などが、フェアな関係になるのではないかと漠然と思ったのです。そうなれば、第三者が操作することも、お金でイイねやフォロワーを買う必要もなくなります。

編集部 / 川本さんがブロックチェーンに可能性を感じたのはそういうところからだったのですね。

川本 / そうですね。個人の行動履歴がブロックチェーンに記されていくことで、より円滑で健全なコミュニティーが生まれると思うのです。

編集部 / それはどういうことですか?

川本 / 個性を大切にとか言われてきましたが、実際はマジョリティーの方へみんな流れがちなのが実情ですよね。SNSのイイねの数で信用してしまうわけですから。でも、本来何が正しいかとか、何が好きかって選択するのは自分自身です。自分の中できちんと判断できるようになるためには、改ざんされない正しい情報が必要。ブロックチェーンは正しい情報を書き記していくので、みんなが自分で選択し、判断していく機会が増えていくと思います。

編集部 / たとえば、SNSでもいろいろなコミュニティーがありますけど、そこに投稿されている内容や行動履歴、個人に対するイイねは改ざんできる可能性がある。けれど、あるコミュニティーでブロックチェーンを導入したとして、ブロックチェーンに記されているものは改ざんができないから、そこにある個人の情報は信頼に値するってことですか?

川本 / そういうことです。SNSで1万人のイイねを得るより、同じ価値基準を持っている100人のコミュニティーで認められるだけで十分だと思うのです。数の問題じゃなくて、質なのです。ブロックチェーンに記された情報の正しさとは重みが違うので。その人の実績や頑張ったことなど、やってきた活動履歴が正しく記録され、それを見て、そのコミュニティーの人が判断をする。個人がやってきたことを見える化することで、ニッチな市場であっても、人と人が信頼関係で繋がりあえるのです。個人にフォーカスしていくことで、マイノリティーの人たちも生きやすく、輝けるコミュニティーの場が増えると考えています。

さらに、これを経済活動に活かすことができれば、新しい経済の形が見えてきます。自分と同じ価値観や向かう目的が同じ人たちとのコミュニティーが生まれ、その中で経済が成り立っていくのではないかと。最終的にはやりたいこと、興味関心だけで食べていける社会ができるという絵を描いています。トークンエコノミーの世界です。

僕は、世の中の貧困や争いごとはすべて誤解からはじまっていると思います。ブロックチェーンですべてを見える化し、情報が個人に帰属されることで、人と人がより分かり合える社会になれば、世の中が平和になるのではないかなと考えています。

つづく

編集・テキスト/徳積ナマコ
生活情報紙の編集、広告制作の会社勤めを経て、フリーランスに。ライフスタイル、クラフト、食、アート、映画、ドラマ、アウトドア、農業、健康、スピ…と、興味があるとなんでも首を突っ込む。人の人生ややりたいことの話を聞き、まとめるのも好物で、最近はプロフィールライターとしても活動。

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