アートな小部屋・ 春宵一刻 vol.1「センス・オブ・ワンダー」

【アートな小部屋・ 春宵一刻】

サステナブルな視点を持った人たちが、アート、本、映画などについて語る小部屋。
「春の夜は雅趣に富み、そのすばらしさは千金に値するもの」という意から、
この小部屋を訪れた皆さんのひとときがそうあってもらえたらと願っています。
写真も美しく、その世界観をうまく表現している

世界的名著「沈黙の春」で大変有名な作家、レイチェル・カーソンの著書の中に「センス・オブ・ワンダー」(新潮社)という大好きな本があります。彼女はその本の中にこう記しています。

『子供たちの世界は、いつも生き生きとして新鮮で美しく、驚きと感激にみちあふれています。残念なことに、わたしたちの多くは大人になるまえに澄み切った洞察力や、美しいもの、畏敬すべきものへの直感力をにぶらせ、あるときはまったく失ってしまいます。

もしも、わたしたちが、すべての子どもの成長を見守る善良な妖精に話しかける力をもっているとしたら、世界中の子どもに生涯消えることのない”センス・オブ・ワンダー=神秘さや不思議さに目を見はる感性”を授けてほしいとたのむでしょう』

続けてレイチェルは、本来備わっている、子ども達が持つ繊細な感性を大切にしていくには、大人は「知る」のではなく「感じる」ことが重要だと述べています。

そう…。今、私たちに本当に必要なのは「知る」より先に「感じる」ことなのです。けれど、大人の私たちは、この「感じる」をすぐさま、ただ「感じていればいい」と解釈すべきではないように思います。なぜなら、人間は「言葉で世界をとらえる」から。感じればよいのではなく、感じたことを表現することも、とても大切なのです。そこに、私たちが共生し、ともに対話を重ねる重要さが生じます。つまり、表現で分かち合うということです。分かち合いには共通言語が必要です。それは日本語、英語というような言語の種類ではなく、他者を思いやる心であり、配慮であると思います。

このことを考えるとき、やはり、地球は常に共存し、人は調和の中に生きているということを実感します。美しいものを見た時にそれを愛する人に見せてあげたいと思う衝動。自然の脅威に接した時、その驚きを誰かに伝えたいという思い。人間は、それが生まれながら備わっている生き物なのではないでしょうか。そう考えると、感じる力と知る力は相互補完の関係であり、どちらが欠けても、物足りない感じになってしまう気がします。

最後にレイチェルは、「子どもと自然を探索するということは、まわりにあるすべてのものに対するあなた自身の感受性に磨きをかけること」だと記しています。見過ごしている世界を、五感を通してもう一度見つめ直してはどうかと言っています。日常使っていると思い込んでいる目・鼻・耳・指先は、何も使われておらず、世界の多くを(自然の多くを)見過ごしているというわけです。確かにそうかもしれません。なぜなら、私たちは、これまでの自然破壊の多くを見て見ぬふりをしてきました。独り悲しむ人を置き去りにしていたかもしれません。これは単純に私たちの五感の欠如であるといえるでしょう。汚れゆく海洋・生態系の破壊・大気汚染・気候変動にさらされている日常をよく見ていなかったといえるのではないでしょうか。

国連が掲げるSDGsは、2030年までに、持続可能な社会を作ることを目的とした、私たちが達成すべき目標です。大切な地球を守るため、そしてこの地球を未来の子供達へ繋いでいくため、私たちがなすべき目標です。そのために私たちは、レイチェルがいうように、謙虚に自然から学んでいくこと、すなわち、感じて表現していくことが必要なのだと思います。しばらく使っていなかったと思われる五感をフル活動させ、錆びついた感覚の回路を開いていくこと、そしてその取り戻した感覚で、再度この世界を見渡していくことが重要なのです。誰一人取り残さないための持続可能なSDGs。それは繋がりの切れない世界と言い換えることができます。

そして、余談ではありますが、今、私がこの原稿を書くに至る出会いも、この本をギフトとして贈ってくれた素敵な人生の先輩との出会いがあることを、改めて思うとき、SDGsの目標は特別なことではなく、五感で感じ、表現し、その想いを繋いでいくことなのだという結論に達するのです。

書いた人/Masae Kawaminami
夢は、「人生がアートな世界」になること。アートとは感動であり、五感に響くすべてがアートと捉え、それが欠けた人生は無味乾燥だと考える。自他ともに認める無類の本好きで、映画・音楽・舞台への造詣も深い。どんな環境にいても、アートが人の心の拠り所であってほしいと願い、コラムを執筆。北海道在住。

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