アートな小部屋・春宵一刻 vol.5 「007」は永遠に

久しぶりに、ザ・エンターテイメントな映画 「007 NO YIME TO DIE」を映画館で鑑賞した。最近はいいのか悪いのか、動画配信で簡単に見られるので映画館に行く機会がめっきり減ってしまっている。

余談になるが、もともと映画好きになったのは叔母の影響が大きい。叔母は当時にしてはとってもぶっ飛んでいて、子供の私を頻繁に映画館に連れて行った。作品はほとんどが洋画。子供心にびっくりするエッチなシーンもあったけれど、それは決して汚いものではなく、とてもお洒落なシーンが多かった。雨の中、失恋で泣く女優の美しさや、ナルシストな男優に心を奪われ、「人生ってうまくいかないものなのね」と涙ぐんだ。小学生の頃の話なので、今思うと笑ってしまうが、少々おませな子供だったかもしれない。けれど、少なくともその経験は私の感受性の形成に大きく役立った気がする。映画好きになった私は、高校生になると「映画研究会」に入り、多くの映画を見ることとなる。幼少期にどんなものに触れるかは、とても重要なことだと思う。

 話が横道に逸れてしまったが、「007」といえば世界的ヒーロー、ジェームス・ボンドと皆が知るところ。ボンド役は時代とともにどんどん変化し、この度のボンド役のダニエル・クレイグは6代目である。そして、今回がダニエル最後のボンド役とのことで、「007」シリーズの大きな節目となる作品となった。

あらすじは本編を観ていただくとして、とても印象的だったのは、相変わらずの壮大な世界観。「007」は世界中を舞台にすることで有名だが、今回も例に漏れず、圧倒的構図で観客を世界の旅へ誘った。

 そして、もう一つ印象的だったのは、 昔はボンドガール、今はボンド・ウーマンというらしいが、その女優のかっこいいこと! ひと昔前のボンドガールといえば、お色気たっぷりでセクシー。ボンドの欲望の象徴で、セックスシンボルとされてきた。しかし、ダニエルが演じ出した頃から、「007」の女性たちは見た目の美しさだけではなく、意志の強さを兼ね備えた、本当の意味での”美しい”女性たちが描かれるようになった。いわば、女性が惚れる女性である。ここには、映画界の「サスティナブル社会」への意識変化があるのかもしれない。  

最近は「アンコンシャス・バイアス」が社会的な問題だという。アンコンシャス・バイアスとは、自分自身が気づいていない、ものの見方や捉え方のゆがみ・偏りのこと。女性なのだからこうあるべき! 男性なのだからこうあるべき! という世間の偏見に対し、問題提起が始まっているということだ。 言い換えるならば、女性らしさとは?男性らしさとは?という命題に対して、「あなたはどう考えますか?」という世界的な問いであるともいえる。

ともあれ、このエンターテイメントの大御所「007」は、そういった社会的問いを内包しつつも、スタイリッシュで、究極のお洒落感を全画面に打ち出していた。ボンドの愛用品である衣装・車・小道具をはじめ、グラス一つでさえも美しく輝く華やかさは、「007」天晴れというところである。

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書いた人/Masae Kawaminami
夢は、「人生がアートな世界」になること。アートとは感動であり、五感に響くすべてがアートと捉え、それが欠けた人生は無味乾燥だと考える。自他ともに認める無類の本好きで、映画・音楽・舞台への造詣も深い。どんな環境にいても、アートが人の心の拠り所であってほしいと願い、コラムを執筆。北海道在住。

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