「スピ系男子はめんどくさい」vol.4 こんなに軽んじられている悲しい言葉『予防』其の3

スピ系男子歯科医の山田和宏先生。医療に携わる者として、人々の「健康のお世話係」となることを決め、「ゲノムドクター」になった話を「予防」という観点から数回に分けて書き綴ってくれました。今回は、「予防」に関するラストの回です。「健やかに、幸せに生きたい」という多くの人の願いを叶える大きなターニングポイントが近く訪れることは確実のようです。「ゲノムドクターって何?」という方も、ぜひ其の1其の2と合わせてお読みください。

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だからこそ、私達ゲノムドクターは、2013年に生み出された。 ゲノムドクターの役割は、「病気に罹らない健康づくりの啓蒙活動」と表現してきたが、発足してから10年近く経過した今、私達も進化していく必要があると気付かされた。従来の予防も、新・予防も訴えたいことは一緒だが、認識していただく内容や真に目覚めていただきたいことをはっきりと啓蒙していかねばならない。 古今東西様々な予防法・健康法がある中、まさに玉石混交の分野。SNSの広告やコマーシャルだけで本物かどうか判断は難しい。

そんな中、私達ゲノムドクターは何をベースに正しい情報を伝えていくか。ベースの一つとして最も重要なワードが「ニュートリゲノミクス」。日本語にすると遺伝子栄養学。これから最も研究が進むであろう、最新の栄養学である。簡単に言うと、私達が食べたものが私達の遺伝子にどのような影響を与えるかを研究する学問。言葉にすると簡単だが、物凄く解明が難しい分野である。なぜなら、その人の今までの食生活や体格や基礎代謝能力や、もう体に関するあらゆることが十人十色であるがゆえ、「The食べ物」が遺伝子にどのような影響を与えるかは、体内での成分の追跡も難しいし、私が思いつくだけでも何十もの障壁が立ちはだかるからだ。今まさにその研究が世界中で進行中であり、もしかしたら今まで言われていた先輩の知恵が全く間違っていたなんてことも明らかにされるかもしれない。

そして、ベースとするもう一つのワード。それが、「遺伝子スイッチ」である。これは、従来の栄養学における「足りない部品を補給する」という概念から、遺伝子スイッチのオン・オフによる体内のあらゆる部品の管理により、生体が正常に働くかどうかを診ていくという考え方である。難しく言うと「エピジェネティクス」。テレビでもこのワードがちらほら出だしてきている。 遺伝子とは、私達人間の体を作る設計図に相当するもの。遺伝子は2万個以上あるとされているが、相互作用も考慮するとその種類は数限りなくあるとも考えられている。その設計図にはスイッチがついていて、私達が元気でいるのも、調子が優れないのも、このスイッチがオンになったりオフになったりの組み合わせにより運命が左右されるというのだ。たった数年前まで親から受け継いだ遺伝子は変わることがない、つまり運命づけられていると言われていたが、環境により遺伝子は大きく変化することが科学の進歩とともにわかるようになってきた。 この環境とは、私達を取り巻く全てのことを指す。食べ物、磁場、人間関係、思考…。目に見えないことからの影響も多大だ。私達は生まれる前から様々な環境により遺伝子スイッチのオン・オフを繰り返し今日を迎えている。どんな環境がどんなスイッチをオンにし、オフにするかの解明が進めば、受け身ではなく積極的にスイッチをコントロールすることが理論的には可能である。この分野が進歩すれば、「歯磨きをしないのに虫歯にならない人」の理由がはっきりとわかるかもしれないし、「同じ年齢なのに見た目年齢が違う」理由も科学的にもっとはっきりするかもしれない。栄養学についても何を食べるとどんな栄養が補給されるのかではなく、どんなスイッチが押されるかに着目が進めば、栄養価に加え、スイッチごとに食べ物が選ばれるようになるかもしれない。

遺伝子栄養学と遺伝子スイッチは切っても切り離せないワードであり、これからの健康長寿の達成のために必要不可欠な概念である。我々ゲノムドクターはこの分野の研究の進歩を切に望んでいて、この新しい考え方を世に啓蒙していきたいと考えている。前述した通り全貌の解明にはまだかなりの期間がかかると予想される。ビジネスの世界も栄養補給の概念の製品やサービスが全てなため、野に降りてくるには様々な障壁もあるだろう。しかし、世の中の多くの人が求めるのは一つ。できるだけ健やかに、幸せに生きていきたい。ターニングポイントが近い未来に訪れることは確実だ。新・予防は、遺伝子栄養学と遺伝子スイッチの概念が世間一般的に受け入れられるようになってはじめて、スタートを切ると断言できる。携帯電話の普及から間もなく、一気にスマホがシェアを独占した如く、健康分野、医療、ビジネス…様々な分野が一気に方向転換をする日も近い。8020が多くの人で達成されるためにも、新・予防を提唱し、正しい知識、新しい概念の啓蒙をこれからも続けていこうと思う。わたしは第一部で触れた、医者の広義の意味である「健康に関するお世話」係として、病院の内外で一生涯活動を続けていきたい。

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書いた人/山田和宏
医療法人社団健生会の理事長/歯科医師 一般社団法人臨床ゲノム医療学会/ゲノムドクター 一般社団法人GenomD予防医学研究所/所長

歯科医師として活動する傍ら、健康長寿の方法を伝えるゲノムドクターとしても活躍。札幌市内に遺伝子調律サロン「Genom.D」を開設。量子科学やバイオレゾナンス療法を用いた「遺伝子レベルで若返る」サービスを提供。2021年から「睡眠LABO」の形でもサービスを提供。https://www.genom-d.com/

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