学校や教育の在り方を考えるきっかけになった一日。子どもがつくる新しい学校「amazing collage」の体験会レポートin札幌

いじめや不登校に関するニュースを耳にするたび、子どもがテストの点数だけで評価されていることを知るたび、学校って何だろう、教育って何だろうと思っていました。かと言って、今の教育システムがすべて悪いとは思いませんし、子どもたちに寄り添い、現場で頑張っている教育者の方たちも知っています。学校の友達と遊ぶことをとても楽しみにしている子どもたちもたくさんいますし、学校の勉強がおもしろいという子どもたちも知っています。ただ、何かずっとモヤがかかったような状態でした。このままでいいのかな?と。今必要とされている新しい教育の形がもっと一般的に広がっていかないのかな?と。

そんなある日、埼玉で今までにないちょっと面白い小学校ができるよと友人から教えられました。結婚式場だった施設をまるごと使った、子どもたち主体のオルタナティブスクール。学年もなく、テストも通知表もなく、子どもたちの「やりたい」を軸にカリキュラムも作っていくそう。その名も「amazing collage」。魔法学校のようなその名前も気になるなぁと思っていたところ、来春(2023年)の開校に向けて、プロジェクトメンバーが各地で体験ツアーを催すとの連絡が。そこで、10月16日に札幌で行われた体験会に参加させてもらいました。

子ども以上に大人も本気で楽しんだ「あそび」の時間

遊び隊長・ヨッシーはみんなを上手に遊びへ誘います

当日、会場となった「KAMINISHI VILLAGE」(旧上野幌西小学校)には、子ども、大人合わせて30人以上が集まりました。「あそび」がどのように子どもたちの育ちにつながっているかを検証していくということで、まずは実際の「あそび」からスタート。学校のプロジェクトメンバーである一般社団法人「COLOR-P(カラップ)」の遊び隊長「ヨッシー」が、全員に声をかけます。「COLOR-P」は、地球をまるごと遊ぶことをコンセプトに、子どもも大人も本気であそび、共に成長していこうと全国各地で基地作り(居場所作り)を行っている団体。無人島キャンプなども実施しています。ヨッシーはそこの遊び隊長ですから、あっという間に子どもたちのハートを鷲掴み。みんなを引き連れてグランドへ。兄弟や友達と参加している子どももいましたが、ほとんどが知らない子同士。最初は少し緊張している様子もありましたが、そこをほぐしていくヨッシーの声のかけ方は見ているほうも勉強になります。

広いグランドを使ってみんなで鬼ごっこ!

まずは子どもも大人も全員で鬼ごっこをやることに。準備体操をして(特に大人は念入りに)、鬼ごっこ。子どもたちが真剣に大人を追いかけるので、大人も気付けば真剣モード。最初の鬼ごっこが終わると、ヨッシーがみんなに新しい鬼ごっこを作ってみようと提案。子どもも大人も混ざった7つのグループに分かれ、今までにないオリジナル鬼ごっこを考えます。子どもの中から沸き上がってくる柔軟な発想を、大人たちは否定せず、それをどう実装していくかを一緒に検討していきます。

各グループ、鬼ごっこの内容が決まったら順番に発表し、それを実際に全員でやってみます。「背中タッチ鬼ごっこ」「青鬼鬼ごっこ」「ヨッシーを全員でつかまえる鬼ごっこ」など、ユニークなものばかり。人間、カエル、馬の3種類の動物に分かれ、それぞれその動物の動きをしながら逃げ回り、別の動物にタッチされたらその動物に変わるという鬼ごっこや、鬼はまっすぐにしか移動ができず、逃げる人はくねくね曲がりながらでなければ移動できない鬼ごっこなど、複雑なルールの鬼ごっこもありましたが、みんな楽しそうにグランドを目いっぱい使って遊んでいます。子どもだけでなく、大人も終始笑顔なのが印象的でした。

「あそび」の中から見えてくるたくさんのことを検証

2階の部屋で学校のことなどを説明

2時間近く遊び、各自お弁当を食べたら、午後から子どもと大人は別行動。子どもたちはヨッシーと一緒に遊びに出かけます。その間、大人たちは学校説明などのお話会。「COLOR-P」の代表・町山辰也さん(たっちゃん)と、校長の岩﨑千佳さん(ちかちゃん)が新しくできる「amazing collage」の学校説明をしてくれたほか(学校についてはあらためて紹介)、スペシャル企画として、この日札幌から参加していたフォトグラファーであり、教育や子どもたちに関わる仕事もしている奥平啓太さんが見た「世界の教育」についてのお話も聴くことができました。

続いて「あそび」の検証です。ちかちゃんは大阪教育大学附属平野小学校で副校長を務め、「未来をそうぞうする子ども」を研究。平野小学校で創られた新しい教科「未来そうぞう科」立ち上げの中心メンバーとして共著も4冊出しています。子どもたちの中から沸き上がる「好き」を大切にすることが、学びや自己肯定感につながると現場での経験から実感。「創造」と「想像」は、子どもたちが生きていく上で何よりも大切になると考え、「amazing collage」ではこの「未来そうぞう」をベースにカリキュラムを組み立てていく予定だそう。

さて、「あそび」の検証は、親だとなかなか気づきにくい子どもたちのつぶやきや行動からの細かな説明に「なるほど」「そういうことか」とうなずくことが多々。例えば、鬼ごっこの最中、1人の男の子が輪を外れてグランドの隅っこで土いじりを始めたときがありました。そのときのことをちかちゃんは、「子どもは自分の心の整え方を知っています。1人でいるほうが安心なときもあれば、みんなでいるほうが安心ということもあります。だから、大人が無理矢理連れ戻す必要もありません。自分が整ったらまた輪の中に入って鬼ごっこをしていますよね」と解説。確かにその子はしばらくすると、みんなと一緒に鬼ごっこをはじめていました。また、子どもの行動に対して「いい」「悪い」ではなく、事実に対して「すごいね」と言うだけでいい。ただし、そこで「偉いね」とは言わないことなど、子どもへの声かけのポイントについても説明があり、親たちにはとても参考になりました。

2つの椅子を使って、いろいろな角度から椅子を見ていきます

「あそび」の検証が終わると、子どもたちが外から帰ってきました。次は、子どもと大人が一緒になって、ちかちゃんが出したお題について考えることに。3つのグループに分かれ、幼稚園で使うような小さな椅子と折り畳み式のパイプ椅子について、その違いや特徴、この椅子を使ってできそうなことなど、それぞれ意見を出し合います。大きさ、素材、形状の違いのほか、座り心地や「この椅子の上で焼き肉ができそう」なんて意見も次々出てきます。黒板に書き出した意見を見ながら、ちかちゃんが「教科メガネ」について解説。2つの椅子に関する意見の中には、算数の要素、理科の要素、図工の要素などが入っていて、これがすでに「学び」につながっているということに「なるほどぉ」と大人たち。もっと話を聞いていたいところでしたが、あっという間に終了時間。子どもたちも名残惜しそうに、ヨッシーやたっちゃん、撮影担当のウメちゃん、札幌のお手伝いスタッフにまとわりつき、大人たちも気になることを時間ギリギリまで質問していました。

「amazing collage」で行おうとしているスタイルが少し垣間見ることができた時間であったとともに、学びや教育の原点にほんの少しですが触れられた気がした1日でした。 次回の記事では、ちかちゃん、たっちゃんにインタビューした内容を紹介します。「amazing collage」への想いやこれからの展望などについて伺いました。

次の記事はこちらhttps://link-earth.com/amazing2/

amazing collage公式ホームページ
https://www.amazing-college.com/home


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書いた人/徳積ナマコ
生活情報紙の編集、広告制作の会社勤めを経て、フリーランスに。ライフスタイル、クラフト、食、アート、映画、ドラマ、アウトドア、農業、観光、健康、スピ…と、興味があるとなんでも首を突っ込む。人の人生ややりたいことの話を聞き、まとめるのも好物で、最近はプロフィールライターとしても活動。https://tokutsumi.com/

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