リレーエッセイ「into one」vol.3 菅野小織さん( クラフトビール会社経営、アロマセラピスト)

リレーエッセイ「into one」

サステナブルな生き方や暮らしを実践している人、
本気で世の中のこと、地球のことを考えている人など…、
WEBマガジンLINK!のコンセプトに共感する方たちが
自分の想いを好きに綴る
とことん自由なリレーエッセイです。
3回目は、北海道でクラフトビール造りに励む傍ら、
アロマセラピストとしても活躍している
菅野小織さんです。

人の命は儚い

10年前にあっという間に津波で父の命を持っていかれたときに感じたこと。それが自分のどこかに沁みついていて【時間は命】と強く思っているところがあります。

 だからなのか? 人の時間を安易に奪う方が苦手で、時間を奪う人=命泥棒と思ってしまいます。そして、そんな経緯もあり、生きている間にやりたいことをやろう!と強く感じました。

 氣が付くとあっという間に時間は経っていて驚きます。人は生まれた時から「死」と隣り合わせです。しかし、そうしたことは教育で学ばないまま大人になります。「死」は悪いものと植え付けられて大人になるので、年を取ることは良くないものとされがちです。しかし、生きている間にどれだけ自分が満足した生き方ができたかで、実は「死」も身近に感じ、受け入れられるのではないかと感じています。

 そうした想いもあり、自分がやりたいことを仕事にしたいと感じるようになり始めました。やりたいことは何なのか?とずっと考えてきたように思います。

 そして、辿りついたのは、なんと【クラフトビール造り】です。ただクラフトビールを造るのではなく、リジェネラティブ・オーガニック農業で大麦を自分たちで育ててクラフトビールにしていくという、氣がつくと面倒くさいことを選択してしまいました(笑)

 リジェネラティブ・オーガニック農業は、農地の土壌をただ健康的に保つのではなく、土壌を修復、改善しながら自然環境の回復に繋げます。土壌が健康であればあるほど多くの炭素を吸収するため、気候変動を抑制する有効な農法です。

 この農法なら土壌の生物多様性を回復させ、二酸化炭素を閉じ込め、化学肥料や農薬を使わずに効率よく作物を育てることができます。

 近年の気候危機を改善したく、少しでも自分たちが取り組める活動をしながら生業としていきたいと大麦栽培からスタートし、RIKKA合同会社を立ち上げました。

 自分たちで、大麦の種を蒔き、栽培し、刈り取り、脱穀などを行い、農家さんのご協力の元、作業しています。

 皆さんと一緒にコミュニケーションを取りながらビール造りに取り組みたいと考え、作業時にはたくさんの方に参加していただき、農作業などの体験をしていただいています。大麦からビールになる過程を知っていただくことにより、「食」や「農」に沢山の方に興味を持ってもらい、環境や自然についても一緒に学ぶことができたらと思います。

 ビールを製造するプロの方々からも、「まさか大麦を栽培するところからなんて!?」と驚かれますが、大麦の成長する過程も感じることができ、どのように大麦が育ち、そこからビールになっていくかを間近で見ることができ、とても愛着がわきます。また、楽しみながら作業や仕事をすることにより、周りの方たちに「そんなに楽しく働いても良いのか!」と氣がついていただけたら嬉しいです。

 実は、先日【北大マルシェアワード】の「農村部門」のファイナリストに選んでいただきました。自分たちのやっていることに少しでも興味を持っていただけたと嬉しくなりました。テーマは「20年後の当たり前を今、はじめよう」です。

 20年後、縦の繋がりではなく横の繋がりが拡大し、手と手を取り合い、植物の「根」のようなイメージで、沢山の方の笑顔に繋がったら、こんなにも嬉しいことはないと感じています。

 老若男女問わず、障がいがあるなしに関わらず、「一万人の船」に乗り合い、クルー同志繋がっていく。素敵な場となることと信じております。

 人生は何があるかわからないものです。私は震災を体験し、シングルマザーでもあり、子どもがディスレクシアという学習障がいがある。ただ、こうしたこと全てが、必要な体験であり、自分で選択してきたことなのだと強く感じているのです。「不幸」とは決して捉えておらず、必要な学びであり、当たり前が当たり前ではないということに、氣がついていくことなのだと。

 そして、そんな体験をしてきたからこそ、RIKKA合同会社を立ち上げ、沢山の方と出逢い、良い化学反応をおこし、コミュニケーションをとれる場を創りあげることを目指せるのだと感じるのです。ヨーソロー精神で!!

クラフトビール用に栽培している大麦畑で

今回のエッセイスト/菅野小織
宮城県仙台市出身。震災後に北海道の洞爺へ移住。仙台の自然食レストラン勤務、豊浦町地域おこし協力隊で農業にも携わり、食と農に関しても造詣が深い。また、傾聴セラピストやアロマセラピストとしても活躍。2021年、クラフトビールの製造販売を行う RIKKA合同会社 を立ち上げ、10月から本格販売をスタート。http://rikkabeer.com

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