今までの教育概念とは大きく異なる新しい学校「amazing collage」。プロジェクトメンバー2人にその想いを伺いました

10月16日に札幌で行われたamazing collage体験ツアーに参加したあと、プロジェクトメンバーの町山辰也さんと校長の岩﨑千佳さんにお話を伺いました。

体験ツアーの様子はこちらから

仲間との出会いが人生を豊かにし、夢を叶えるきっかけになる(たっちゃん)

たっちゃんこと町山辰也さん


一般社団法人「COLOR-P(カラップ)」の代表を務める「たっちゃん」こと町山辰也さん。大きな体で常にニコニコ、誰に対しても穏やかな口調で話しかけてくれます。頼れる兄貴という雰囲気ですが、自身のことを「世界一頼りない代表です」と笑います。

米軍専用ホテル勤務、タクシー運転手などさまざまな経歴を持つたっちゃんが、「COLOR-P」の前身となる団体を立ち上げたのは約8年前。児童養護施設を出たあとの子どもたちをサポートする団体に関わる中で、一人ひとり境遇は違っても前向きに生きていける子どもたちでいっぱいにしたいと考えるようになります。「僕の周りには、好きなことをやって生きているおもしろい人がいっぱいいる。それぞれ大変な経験をしていたり、悲しい過去を抱えていたりするんだけど、みんなね、前向きで明るくて、輝いている。どうしてそんなに変われたの?って聞いたら、人との出会い、仲間との出会いで人生が変わったって言うんだよね」。それならば、子どもたちが人と繋がり合うことができる場所、仲間を作れる場所、人生が変わるきっかけになるような場所を作りたいと、子どもたちと遊ぶ団体を立ち上げます。「最初は、自分の子どもにしてあげたいと思うことをやっていたんだけど、それから徐々に子どもたちが『やりたい』ということを形にしていったら、どんどん今のようなスタイルになっていきました」。今は、全国各地で遊びのイベントや基地作りなどを行っています。

明るくて穏やかなたっちゃん。これまでの歩みはすべて順風満帆だったかのように見えますが、「ずっと人に頼ってはいけない、自分がしっかりしなきゃって思って生きてきたんだよね。でも自分一人で抱え込みすぎて、潰れてしまったことがあって…。そのとき、16歳下の弟に初めて助けを求めました」とたっちゃん。すると弟から、「こんなときに言うことじゃないかもしれないけれど、初めて兄貴に頼られてめちゃくちゃうれしい。兄貴の力になれることがあるのがうれしい」と言われます。「頼ることは恥ずかしいことではなく、逆に頼ること、人に力を貸してもらうことは、相手にとっての喜びになると知った瞬間でした」。それからたっちゃんは、仲間に力を貸してもらって夢が叶えられることを伝えていきたいと思ったそう。「だから、今は世界一頼りない代表(笑)。自分がやれることをやって、できないところは助けてもらえばいいと思っている。ヨッシーをはじめ、仲間には本当に恵まれています」と話します。そして、「COLOR-Pは、一緒に遊んだ子どもたちが大きくなったとき、共に仕事をすることを目標にしています。僕たちと遊んでくれた子たちはみんな仲間。彼らが大きくなったとき、仲間として一緒に楽しいこと、ワクワクすることができたらいいなと思っています」とたっちゃん。

「あそび」を通じて、子どもも大人も共に育つことをコンセプトにしている「COLOR-P」。全国各地で活動していますが、あるとき、埼玉県の東松山市にある結婚式場の跡地を使って基地を作らないかと声がかかります。まるでハリーポッターの世界のような広い敷地と建物を見て、「ここが学校だったらおもしろいよね」と。そこでたっちゃんの頭をよぎったのが、「COLOR-P」の無人島キャンプに参加していた小学校教諭のちかちゃんでした。「学校を作りたいって話をしていたのを思い出して、ちかちゃんに声をかけました」。

まるでヨーロッパのお屋敷のよう。なんと、ここが学校に!


教育の在り方や学ぶことに関して、意見が一致していたたっちゃんとちかちゃん。ここに学校を作るという計画は、何かに導かれているかのようにトントン拍子で進んでいきます。「びっくりするくらいのスピードで話が進んでいます。今年の春に、場所を見てもらうための見学会を開いたら、参加した子どもたちが自分たちで子ども会議を開いて、『こんな学校がいい』『こんなことがしたい』と(笑)。これはもう待ったなしだなと思いました」。その後も学校に興味を持った子どもや大人たちで会議が行われ、どんな学校にしたいかを具体的に話し合っているそう。夏には子どもたちが考えたお祭りを開催、今は定期的にプレ授業も行っています。

すでに子どもたちが元結婚式場に集まってプレ活動をしています!


ここまで聞くと、学校は楽しそうだけれど学費が…と考えてしまう保護者も多いはず。「最初の年はどうしても学費がかかってしまうけれど、今は全国各地の企業から寄付や援助を募ったり、財団法人を立ち上げたりするなどして、できるだけ経費をかけずとも子どもたちのワクワクややりたいことを叶えていきたいと動いています。平等に学べる環境、遊べる環境を作っていきたいし、ゆくゆくは学費も無料にしたいと思っています」。具体的に応援してくれる企業などとの話も進んでいるそうです。 最後に、「人との出会いで人生は変わると思う。だからこそ僕は、ステキな仲間と出会えるような居場所をこれからもたくさん作っていきたいし、amazing collageもそんな学校であってほしいと思っています」と話してくれました。

みんなが「生まれてきてよかった」と思える社会をつくりたい(ちかちゃん)


校長先生のちかちゃんこと岩﨑千佳さん

続いて、amazing collageの校長・ちかちゃんこと岩﨑千佳さんのインタビュー。オンライン上でお会いしたことはありましたが、リアルで会うのはこの日が初めて。想像していた以上に小柄(148センチだそう)で驚きましたが、その体から発する熱量や勢いは誰よりも存在感がありました。

ちかちゃんは大阪出身。「子どものときに学校の先生になりたいって思ったことはなかった」と話します。どんな職業に就きたいというのはなかったと言いますが、「ただ漠然とですが、みんなが生まれてきて良かったと思える世界をつくりたいという思いはありました」。どんな学生時代だったのかを尋ねると、「中学受験をして私立中学に入ったのに、受験反対!って弁論大会で言うような子だった」と笑います。それでも中学・高校の学校生活はとても楽しかったそうで、部活を3つ掛け持ちしていたというエピソードは、今のちかちゃんのパワフルさにも繋がっていると妙に納得。大学時代も学校の制度を変えたことがあると笑いながら話します。

小学校の先生になろうと思ったのは19歳のときだったそう。「その頃、少年犯罪がニュースでよく扱われていて、魔の17歳とか呼ばれていました。ちょうど、あるニュースキャスターが他人事のように事件の話をしているのを見たとき、こういう社会はおかしいって思ったのがきっかけかな。少年犯罪をなくすため、生まれてきて良かったと思える社会をつくるためにはどうしたらいいかを考え、事件が起きてから関わる警察官や弁護士だと遅い、それなら早い段階で子どもたちと関わる小学校の先生だって思ったんですよね」。

大阪・堺市の公立小学校に勤務したのち、2013年に大阪教育大学附属平野小学校へ。同校は文部科学省研究開発指定校で、ちかちゃんは同僚たちとともに新しい教育の形を模索、研究。「未来をそうぞう(想像・創造)する子ども」を育む現場作りのため、「未来そうぞう科」を立ち上げます。従来の学校教育とは大きく異なる授業の数々は、想像以上に子どもたちの力を引き出し、子どもたちはたくましさを見せてくれたそう。その取り組みについては、「創造∞創造が育む 未来を『そうぞう』する子ども」など、4冊の共著に記されています。

子どもたちが生まれてきて良かったと思えるような学校を作りたい。ちかちゃんの中にあった想いが形になる機会は思ったよりも早く訪れました。無人島キャンプなどを行っていた「COLOR-P」との出会いをきっかけに、埼玉の結婚式場跡で「amazing collage」を立ち上げることに。今年2022年3月に大阪教育大学附属平野小学校を退職し、これまでの経験を生かした学校作りをスタート。「もうちょっとゆっくり作っていこうって思っていたんだけど、見学会に集まってくれた子どもたちがどんどん『こんな学校がいい』って意見を出してくれて、さらには子どもたちだけで会議を始めちゃって。これはもうやるしかないなと」。当初は法人化してからとも考えていたそうですが、学校法人にするには時間が足りず、そこに関しては追って法人化を進めていくとのこと。スタート時は無認可のオルタナティブスクールという形で、2023年春の開校に向けて準備が進んでいます。

amazing collageでの一コマ。子どもたちはいきいきしながらプレ活動に参加


amazing collageには、細かいカリキュラムなどはありません。「子どもがつくる 大人を育てる 未来そうぞう学校」という大きなコンセプトのもと、今は5つの方針・目標を掲げています。

  • 自分の「好き」を大切に 
  • とことん「本物」を追求 
  • 学びのスタートは子ども自身の「必然性」 
  • 全ての中心に子ども。周りには「チーム大人」 
  • まずは「やってみる」

「学校が始まったら、この目標も変わっていくかもしれません。こうでなければいけないというのはなく、amazing collageはみんなで一緒につくっていく学校であり、常に進化し続けていく学校だと思っています」とちかちゃん。大人が一方的に決めたものを与える教育ではなく、子ども主体の学校運営を行うことで、子どもたちが好きなことを通じ、これから生きていくために必要なものを自ら発見し、未来をクリエイトしていくことこそが、「生まれてきてよかった」と思えることに繋がるというわけです。④のチーム大人は、学校のスタッフだけでなく保護者も含まれています。「子どもから学ぶことはめちゃくちゃ多い。親も一緒にチームとして関わり、みんなで子どもたちに愛情を注ぎ、サポートすることもamazing collageでは大事にしたいと思っています」。ちかちゃんは、子どもの頃から世界中の先住民の暮らし方、生き方に強く惹かれていたそう。「先住民は自然と共生しながら、生きることに真っすぐ向き合っていると思うんです。そして彼らのコミュニティーではみんなで子育てをしていて、そこには子どもたちの居場所がある。amazing collageもそういう場所になったらと考えています」。

開校に向けて猛スピードで動いているamazing collageのプロジェクトチーム。最後にちかちゃんが見せてくれたスケッチブックには、ちかちゃんやいつかつくりたいと考えていた学校や居場所への想い、具体的な絵などが書かれていました。「実はこれに書いていたことがどんどん形になっているんです。このスピード感は、天に動かされているような感じ。だから、自分はとにかくお役に立てることを全力でさせてもらっているだけ」とちかちゃん。

ちかちゃんが見せてくれたスケッチブック

話を聞いているだけでもワクワクするamazing collage。来春の開校が楽しみです。amazing collageに興味がある方は、ホームページもぜひご覧になってください。また、amazing collageのプレとしてオンラインサロンamazing friendsも開かれています。amazing friendsのメンバーになると、大人授業、子ども会議などに参加できます。

amazing collage公式ホームページ  https://www.amazing-college.com/home


書いた人/徳積ナマコ
生活情報紙の編集、広告制作の会社勤めを経て、フリーランスに。ライフスタイル、クラフト、食、アート、映画、ドラマ、アウトドア、農業、観光、健康、スピ…と、興味があるとなんでも首を突っ込む。人の人生ややりたいことの話を聞き、まとめるのも好物で、最近はプロフィールライターとしても活動。https://tokutsumi.com/


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