冬の間にこれでもかと降った雪もようやく溶け、安平町にも春がやってきた。あちこちで蕗の薹が顔を出し、クロッカスやミズバショウなど春を告げる草花が、町を彩っている。
長い冬が終わったということは、ようやく農業の季節がやってきたことを意味する。
私たちにとっては、移住してから2年目のメロンシーズンに突入だ。
昨年は、農業研修生として指導農家のもとでメロン栽培のイロハを教えてもらった。2年目の今年は、町の所有する研修用の農場で、昨年学んだことを実践する年だ。これまでメロンの種まきから管理、収穫など、つきっきりで教えてもらったことを、夫婦2人でだけで行っていく。
安平町のメロンの収穫期間は5〜10月。品種を変えながら、なんと約半年も収穫が続く。夕張市や富良野市など、北海道の他の産地と比べて、収穫が最も早く始まり、最も遅くまで続くのが特徴だ。
そのため、早い人は雪が降り積もる1月には種まきを始める。ただ、寒い時期のメロン栽培は、ハウスの中を加温しなければならない上に温度管理が難しく、熟練のメロン農家しか取り組んでいない。そのため私たち研修生は、暖かい日が増える3月に種まきを始める。
種を蒔いて、芽を出す。簡単なように思えて、これが素人には意外と難しい。
メロンはとくに繊細な作物なので、種の上に何ミリ土をかけるのか、土の温度は何度に保つのか、水の量は十分に足りているのか――そういったことに細かく気を使わなければならないのだ。ただ土に種を蒔いたら芽が出てくる訳ではない。
発芽するのは、種を蒔いてからちょうど3日目。「ちゃんと芽がでてくるのかな?」とドキドキしながら畑を見に行くと、ほとんどの種からかわいらしい双葉がしっかりと出てきていた。
自分たちで蒔いた種が芽を出す様子は、まるで我が子の成長を見ているよう。それが、こんなにも嬉しいことなんだと、しみじみと感じた。
でも、ここからが本番だ。種を蒔いてから収穫まではおよそ4ヶ月。その間に温度管理やメロンの枝葉を整える整枝作業など、まだまだやることはたくさんある。
最初の収穫を迎えるのは7月の予定。果たして無事においしいメロンが収穫できるのか……?このコラムでも報告を続けていくので、ぜひ暖かい目で見守ってもらえるとうれしい。
書いた人/小林麻衣子
神奈川県出身、北海道在住。大学卒業後、農業系出版社で編集者として雑誌制作に携わったのち、新規就農を目指して夫婦で北海道安平町に移住。2021年4月からメロン農家見習いとして農業研修に励むかたわら、ライターとしても活動中。
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