北海道に秋がやってきた。本州では長引く残暑のニュースが話題となるなか、9月だというのにもう長袖やニットをひっぱり出している。暑かった夏が嘘のようだ。
秋といえば、食欲の秋。それはつまり農家にとっては収穫の秋である。この季節は暑い夏を乗り越えた農産物たちが、次々と収穫を迎える。
私が住んでいる地域には、カボチャを育てている人が多いので、メロンの作業が落ち着いてくると「カボチャの収穫を手伝いに来て欲しい」と声がかかる。
カボチャは、6〜7月に畑に植えて9月に収穫が始まる。栽培管理はさほど難しくないらしく、このあたりでは何ヘクタールもカボチャを植えている人が多い。ところが、カボチャの収穫が大変なのだ。
収穫適期になったカボチャは、「コルク化」といってヘタの部分が固くなる。葉の中に埋もれているカボチャを一つ一つ確認し、コルク化している収穫できそうなものを見分けて、ハサミでバチンと切る。それをひたすら繰り返す。
カボチャを包丁で切るときの皮の硬さを想像してみてほしい。あれよりちょっとだけ柔らかいヘタを1日に何百個と切っていくのだから、仕事が終わる頃には手の力がほとんどなくなっている。
そして、切り取ったカボチャは一箇所に集められて、巨大なコンテナへ詰め込まれる。ちょうどラグビーボールを投げるようにパスしながら、トラクターに載せられたコンテナにひたすら詰め込む。まさに人海戦術だ。
これを毎日繰り返すので握力はほぼ使い果たすし、カサカサに乾燥したカボチャの葉っぱまみれになるので「もうしばらくはカボチャを見たくない」という気持ちになる。さらにカボチャの収穫が終われば、農家の一大イベントの稲刈りが始まる。収穫の秋に休みなし、である。
とはいえ収穫が終わったら楽しみもある。打ち上げのジンギスカンだ。
北海道ではバーベキューコンロを倉庫に常備している家が多いので、昼休みに網を持ち出して庭先で肉を焼き始める。噂には聞いていたものの「これが北海道なのか!」と感心してしまった。
農作業で汗を流したら、おいしい肉や野菜が待っているので、農家にとっても収穫の秋は「食欲の秋」なのかもしれない。ちなみに、冬は農閑期に向けて力仕事も減っていくが、食欲は衰えないので、冬の間に太る人が多いんだとか(笑) 。
山や峠で雪の知らせが届くと、いよいよ来年のメロン作りに向けた畑の準備と冬支度が始まる。そのお話はまた次回に。
(つづく)
書いた人/小林麻衣子
神奈川県出身、北海道在住。大学卒業後、農業系出版社で編集者として雑誌制作に携わったのち、新規就農を目指して夫婦で北海道安平町に移住。2021年4月からメロン農家見習いとして農業研修に励むかたわら、ライターとしても活動中。
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