リレーエッセイ「into one」vol.2 保井円さん(神主、宿屋オーナー)

リレーエッセイ「into one」

サステナブルな生き方や暮らしを実践している人、
本気で世の中のこと、地球のことを考えている人など…、
WEBマガジンLINK!のコンセプトに共感する方たちが
自分の想いを好きに綴る
とことん自由なリレーエッセイです。
2回目は、岐阜県揖斐川にある大和神社の禰宜であり、
宿屋のオーナーでもある保井円さんです。

神にすべてを委ねる ― 神主としての生き方を前に想うこと

のっけから怪しげなタイトルですみません。ここはスピ系の広場ですか?と誤解をされてしまいそうですね。しかし、1万人の船への参加も、僕にとってはこの生き方の流れの中の出来事です。リレーエッセイ執筆の依頼をいただいた時、メンバーの皆さんには、保井円という人間の根本をお伝えしておきたいと思い、この話を書くことにしました。山田和宏さんが、医師という立場で科学的な方面からお話をされたので、僕は神主として、ある意味対極の立場から「into one」を引き継いで述べてみたいと思います。

「人生をすべて神に委ねて生きています」。僕は、知らない人にでも真顔でこう言える神主という職業に就いていることを、ありがたく思っています。なかなかそんなこと、言えないですよね、普通は。しかし、宗教家としての神主の言葉なら、それほど抵抗なく受け入れてもらえるのではないでしょうか。

そしてその意味するところは、文字通り、自分の行く末は全て神にお任せしている、ということです。

僕は23年間フランスに滞在していましたが、その間も実家の神社の仕事を手伝うために、年に2回は帰国していました。そしてフランスに戻る際には神社で手を合わせ、旅の安全を願って帰仏するのが習わしでした。しかし、40歳ぐらいだったと思いますが、ある時ふと「もし今回飛行機が落ちるべきならそうして下さい」という祈りに変わったのです。昔から不惑とはよく言ったもので、ちょうどその頃、ある種の覚悟が備わったのでしょう。

この感覚になるためには、重要な要素が必須です。それは、とことん神を信じるという心持ちです。宇宙の果てがどうなっているかわからないように、我々人間にはわからないことがある。それを自覚していることはとても大切なことです。そして我々は、そのわからないことを埋めるために、神話を必要とします。それは必ずしも神の物語である必要はなく、科学であったり、経済であったり、哲学であったり…。いずれにしても、何らかの心の糧を持ちながら、将来のこととか、死とかについて、自分を納得させながら生きています。僕の場合は、それが「神」なのです。

僕にとっての神とは、人生をとことん応援してくれる存在、そして完璧な存在。

人間は生まれる前に神様と約束をする。それまでの自らの魂の遍歴を顧みたときに、足りない部分がいろいろある。成長を続けたい魂は、不足を埋めるために自ら課題を課し、神様がそれを認めて、再びこの世に降りてくる。肉体という重い衣をまとってしか経験の出来ないことがあり、それを体験することによってしか魂は成長できない。神様は、保井円の魂が生まれる前に決めた自らの課題、神様に誓った約束をしっかり果たせるよう、最大限の支援をしてくれている。無事人生の目的を果たすために、最高のタイミングで最高の人や物事を通して、最適な課題を、日々与えてくれている。そして神様はこの点において、つまりこの世に生まれた魂が自ら課した課題をクリアできるよう最大限の支援をしているという点において、全ての人にとって完全に平等である。

これは僕が言い出したことではなく、ずっと昔から色んな人が異口同音に語ってきたことです。そして大切なのは、この神話は僕にとって真実である、ということです。20年来この神話を指針として生きてきて、来年還暦を迎える今、ますますその思いは強まっています。

神が完璧であり、最大限の支援をしてくれているとすれば、何の心配があろうか?

人間には自由意志というものが与えられているので、もちろん選択を誤ることもあるでしょう。しかしそうであっても、神様は自分を正しい方(自分の課題を乗り越える方向)に導いてくれることは間違いない。としたら、どっちに流れていくのか、そこはもう神様にお任せして、自分は日々与えられる課題に、誠心誠意取り組めばいい。僕のすべきことは、そこに尽きます。出来るだけ誠実に、日々の課題に取り組もうと努力すること。その後はいずれにしても、神様が最適な課題を与えてくれます。こんなに安心なことはない。まさに大船に乗った気分です。

なので僕には、将来に対する不安というものが一切ありません。どう転んでも良いに決まってる。ただただ毎日が感謝の連続で、幸せです。そしてこれは、恐らく全人類に共通の真実ではないかと、僕は密かに思っているのです。信じるか信じないかだけ。

僕は人様のお役に立てたときに、幸せ度が増します。恐らくそれが今生の課題なのでしょう。そして、この1万人の船に乗ることを選んだ皆さんは、恐らく同じ課題を持っている。方法はいろいろあるでしょうが、とにかく人様のお役に立つこと。それこそが「into one」のための行動であり、この1万人の船というまさに大船に乗っている意味なんだろうと、今思っています。

今回のエッセイスト/保井円
宗教法人大和神社 禰宜。古民家貸別荘「宿屋揖斐川」オーナー経営者。サンシール日仏友好協会名誉会長。1993年~2013年までフランス中部のサンシール市にあったフランス甲南学園トゥレーヌに国語教師として勤務。学園閉校後、観光業に携わり、2016年に帰国。古き良き日本文化を伝えるため、実家の古民家を改装し、2019年より宿屋揖斐川を始める。

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    • アペペ

    千羽鶴やめた方がいいっすよ
    たまたま関連ニュースを見た事がないのかもしれませんが
    千羽鶴は迷惑行為として過去何回も問題になりニュースにもなってますよ?

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