この一皿に心を込めて。とっておきグルメ探訪vol.2「知恵の木」

【この一皿に心を込めて。とっておきグルメ探訪】

食べる人の笑顔を思い浮かべながら、作り手が心を込めて調理する一皿には、心と体を元気にしてくれる不思議な栄養がぎゅっと詰まっています。そんな一皿が味わえるとっておきのお店を紹介するこのコーナー、第2回目は札幌市福住のオーガニックカフェ「知恵の木」を訪ねました。

地下鉄東豊線福住駅から徒歩15分、車で5分ほどの「知恵の木」。

マクロビオティックやオーガニックの料理、スイーツが味わえ、心と体を元気にしてくれるカフェとして、2003年にオープンしました。

「知恵の木」が誕生したきっかけは、同店ディレクターでありお隣の宮本治療院で治療師として活躍する宮本直彦さんの祖父の病気にさかのぼります。心臓の病気を患い、医師に余命4カ月と言われながらも、たまたま知り合ったマクロビ指導者の指導で健康を取り戻し、玄米食の素晴らしさ、食べ物と人の心や体の関係について深く考えるようになったそう。日本ではまだ「マクロビオティック」「オーガニック」などという言葉に馴染みがなかった頃のことです。

「食」の大切さを体感した祖父の体験を原点に、以来、宮本さんの一家では直彦さんの父母、直彦さんと、3代にわたり食を通じた健康指導の活動を行ってきました。

現在、店長を務めるのは直彦さんの妻・美子さん。

「知恵の木」でいただけるのはマクロビオティックの理論に基づいた料理。穀物中心で、伝統的な調味料や自然農法で育った野菜を使ったものです。店で肉・魚を使うことはしないため、「ベジタリアン料理のお店」と言われることもありますが、マクロビオティックは本来ベジタリアンとは違う概念だそう。

「人の歯には切歯、門歯、臼歯がありますね。それぞれ肉を食いちぎる、野菜を噛む、穀物をすりつぶす、という役割を担っています。歯の本数や大きさに合わせた割合で、肉:野菜:穀物をおよそ1:2:5の割合で食べるのが理にかなっているというのが、マクロビオティックの考え方なのです」(美子さん)

自然に逆らわずに食物をいただくことで、人は体も心も健康に整うと美子さんは話します。

さらに、お米を研いだり野菜を切ったりという調理には「瞑想」に通じるものがあると、美子さん。心穏やかに調理をすることで自然に心が整い、その心地よいエネルギーはきっと食べる人にも伝わるはず…と考えています。

確かに。怒ったりイライラした状態で調理をすれば、手を切ったり焦がしたりといった失敗が起こりがちですものね。

そんな「知恵の木」でいただく今回の一皿は、「四季の知恵の木ごはん」(1200円)。

プレートの主役は圧力釜でふっくらと炊いた玄米。噛むほどに甘みが広がり、玄米初心者にも食べやすいおいしさです。この日は、インドネシアの伝統的発酵食品「テンペ」のマリネ、紫イモと甘酒のノンオイルドレッシングをかけたスチーム野菜、ひじきの煮物、ひよこ豆とキヌアのサラダが登場しました。

自家製麦味噌の味噌汁と三年番茶がセットになっています。

「私たちが使ったり、販売している調味料は、確かに一般のものより値段が高いです。でも、本当の材料を使い、時間をかけて作った調味料は、確かな作用で体に働きかけてくれます。普段『安さ』だけで調味料や食材を選び、その結果、体調をくずして薬代や病院代をかけるのでは意味がないように思えてなりません。本物の調味料なら、大事に使おうという気持ちになるし、少しの量・種類だけで深い味わいが出るのです。普段から本物を食べて体が整えば、自然にお肌もきれいになって高価な化粧品も不要に…。私たちが提案したいのは、そんな循環の上に成り立つシンプルな生活なのです」と美子さん。 実際、この日いただいた「ひじきの煮物」も、醤油だけで味付けしたとは思えないくらい、味わい深いものでした。

お店では料理教室も随時開催され、その情報はFacebookやInstagramで告知されます。

小学生とその親を対象としたクラスもあり、例えば「ハンバーガー」を作る回なら、小麦の話から始まって、パンを作り、大豆ミートと野菜でパテを作って、ソースも手づくり…といった内容。ほかにも、玄米を炊いておむすびを握ることで、白米と玄米の違いを学んだり、「一物全体」の考え方に触れるなど、すべては理解しきれなくても子どもたちの心に「食」への関心を楽しく育てる活動も行っています。

ところで、マクロビオティックのベースには「陰陽五行」という概念があります。春夏秋冬の四季、それぞれの季節の変わり目となる年4回の土用を意識し、季節に合った過ごし方をすることで健康な生活ができる、という考え方です。

これからの季節「秋」を象徴するのは、五行の要素「木・火・土・金・水」のうち「金」。

エネルギーが外へ外へと解放される暑い夏が終わり、エネルギーがぎゅっと凝縮され実りを迎えます。

秋は、収穫期を迎えるお米や野菜などをいただくのにとてもよい季節。「白」の象意もあるので、白菜など白い野菜もおすすめだそう。

ちなみに「知恵の木」では基本的に玄米は圧力釜で炊いていますが、エネルギーが外へ解放される夏には圧力をかけることを避け、土鍋で炊くようにしているそうです。

そして美子さんが「何より大切」と話すのは「よく噛むこと」。

食を通じて心身を整え、これからの季節もカゼ知らずで過ごせるとよいですね。

■知恵の木
札幌市豊平区福住1条6丁目11-10
TEL.011-853-5134
営業時間 11:00~17:00
定休日 日曜日・祝日
駐車場 あり(隣の宮本治療院と共同で店舗前4台。満車時はスタッフにご相談ください)
https://www.chienoki.info/

書いた人/石渡裕美(いしわたりひろみ) 東京都出身、1996年から札幌在住。観光・飲食・育児・農業・医療分野などでライター兼編集者。臆病なのに好奇心旺盛、忘れっぽい習性で森を育てる「リス」をこよなく愛しています。

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